カテゴリー別アーカイブ: 活動記録

会員有志の活動記録です(全ての山行記録は活動報告をご確認ください)

冬山合宿 仙丈ヶ岳

期 日:2021年12月29日~31日
参加者:Lオヨシ、なべたけ、わたゆき、やまけん、ヒー、しげちゃん

12月29日(水)晴れのち風雪
戸台河原駐車場(8:40)-丹渓山荘跡(13:15)-八丁坂ノ頭(14:30)-北沢峠(16:55)-長衛小屋(17:25)幕営

クリスマス辺りから冬型の気圧配置が強まり、年末年始は南アルプスでも厳しい寒さや降雪に見舞われる予報。出発前の最終確認では想定される事態を共有し、6人の団結力をさらに強めた。
4時過ぎに相模原を出発、渋滞に巻き込まれることなく戸台河原駐車場に到着。年末年始の北沢峠(長衛小屋)は賑わうとのことだったが、先に止まっていた車は5台程度だった。登山口に詰めている警官の方に計画書を提出して行動開始。暫く河原歩きが続くが、大きなザックを背負っての歩行はきつい。

渡渉できる場所を探す

途中、渡渉や堰堤越えを数回、熊ノ穴沢出合辺りから積雪が足元を覆うようになった。3時間程度と見ていた河原歩きは結果的に4時間半かかり、ようやく丹渓山荘跡(赤河原分岐)に辿り着く。いよいよ、ここから急登が始まる。1時間ほど黙々と登り続け八丁坂ノ頭で一休み、凍結箇所が目立ってきたのでアイゼンを装着して行動再開。徐々に雪深くなり、先頭は歩きづらさも増してきたためワカンを装着。各々のペースで歩いていたことも相まって、徐々に隊の間隔が広がり始める。大平山荘に着く頃には先頭と最後尾の差は20分程度になってしまった。北沢峠ですっかり日も暮れ、ヘッドライトを装着。風雪が舞い始め、疲労もピークに達し、長衛小屋までの道のりがとても長く感じた。広い幕営地にテントが6張、思い描いていた風景と違う。予定より3時間到着が遅くなったこと、16時からの気象通報が確認できなかったことやメンバーの体調を勘案し、翌朝の行動開始を遅らせて無理のない計画に見直すことにした。

12月30日(木)曇りのち風雪
幕営地(7:50)-四合目(11:25)-大滝ノ頭(12:15)-長衛小屋(13:50)幕営

夜中に何度か暴風が吹いたようだが、眠気の方がまさった。しっかり休養を取ったことでメンバーの体調は良好。事前に確認していた予報では夕方から荒天。仙丈ヶ岳の登頂は諦め手前の小仙丈ヶ岳を目指すこととした。また天候が荒れる前に幕営地へ戻るため、12時をもって引き返す計画に変更した。我々より先に登っているパーティーはおらず、僅かに残る数日前の薄いトレースを頼りにラッセルを強いられることになる。積雪の状況と各自の体力に合わせながら、6人で交代しながら進む。二合目までの急登では積雪は膝ほど、それより先は腰より上まで埋まりそうになる。なぜだか気持ちが躍る。

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久し振りのラッセル祭り

四合目を過ぎた辺りで山頂から下ってきたという学生2人とすれ違う。三峰川岳沢から縦走してきたそうで、昨晩は仙丈ヶ岳と小仙丈ヶ岳の間の稜線上で幕営したとのこと。時計が12時を回った頃、ようやく五合目の大滝ノ頭に到着。ラッセルで相当時間を費やしてしまった。ここから小仙丈ヶ岳までは往復で3時間以上要するため、大滝ノ頭で記念撮影をして幕営地に戻ることにした。

大滝ノ頭で記念撮影

あれだけ苦労したラッセルを忘れてしまうくらい、下りはとてもスムーズだった。久々の尻セードも楽しかった。天候は予報通りに崩れ始め、15時過ぎには吹雪き始めた。16時の気象通報によると、翌日は下山まで天気が持ちそうだったので計画変更はなし。少し早めに夕食を取り就寝した。

12月31日(金)風雪のち晴れ
幕営地(6:30)-八丁坂ノ頭(8:45)-丹渓山荘跡(9:40)-戸台河原駐車場(14:10)

暴風で夜中に何度も起こされ、若干寝不足を感じながらの起床。外に出てみるとテントの周りにもしっかり雪が積もっていた。

昨夜の吹雪きでまた雪が積もる

湿ったテントを撤収、まだ薄暗く吹雪く中を出発。自分たちが初日に付けたはずのトレースは完全に消えていたので、斜面に落ちないよう注意しながら進む。3時間あまりで丹渓山荘跡まで下る。そこに広がっていたのは、真っ白に染まった河原であった。

初日とは別世界の河原

初日と同じ場所とは思えないくらい様相が変わっていたが、小動物に出会えそう雰囲気でちょっとワクワクした。再び4時間半の河原歩きだが、積雪と凍結により多少なだらかで行きよりも歩きやすい。途中、6パーティーほどとすれ違う。甲斐駒、仙丈、鋸と、各地で新年を迎えるのであろう。
全員怪我もなく無事に下山。今回は天候に悩まされたが、久し振りに冬山を堪能できた。山行中の支え合いによってメンバーシップも強くなり、今後の会山行に向けて良い流れを作る合宿になった。

(記 オヨシ)

会山行 笛吹川水系東沢 釜ノ沢西俣

期 日:2021年7月17日~18日
参加者:Lオヨシ、コバヤン、ヒー

7月17日(土)晴れ
西沢渓谷駐車場(8:40)-釜ノ沢出合(14:00)-両門ノ滝(15:20)-1600m付近(16:25)幕営

笛吹川の東沢には、鶏冠谷、ホラの貝沢、金山沢や乙女沢など沢がいくつもある。中でも人気なのは甲武信岳に詰める釜ノ沢、今回はあまり記録を見ない西俣を遡行。西沢渓谷入口から西俣と東俣の分岐となる両門ノ滝まではお馴染みのルート。奥秩父によく来ているコバヤンは何度目だろうか。西沢渓谷駐車場への到着が予定より遅れ、これが後々響くことに。

エメラルドに輝く沢

山の神の祠に着くまでに数パーティーを見かけたが、釜ノ沢に向かうのは我々だけのようだ。

癒やされる流れ

体調が万全でなかったためか、思うようにペースが上がらず、冷たい水に体力も削られていく。何とか15時過ぎに両門ノ滝に到着。

おなじみの両門ノ滝

左の西俣は直登できない滝なので右岸を高巻く。その先は、東俣に比べて草木が生い茂って薄暗い。沢の流れは早く沢床も磨かれているようで歩きづらい。仕方なく湿って滑りやすい淵を暫くトラバースする。

西俣は想像より急な流れ

1時間かからないところで、幕営に最適なスペースに辿り着く。先行パーティの焚き火が狼煙のようにあがっていた。

広々としたテン場、迷わず到着

2パーティーだけで広々と贅沢に使わせてもらう。補助ロープをいくつかの立ち木に結んで濡れた装備を乾かし、焚き火と食事をゆっくり楽しんで就寝。

7月18日(日)晴れ
幕営地(5:30)-水師(10:30)-甲武信岳(11:25)-西沢渓谷駐車場(16:10)

翌日は5時半から行動開始。幕営地より先はナメとゴーロが続くが、台風の影響か倒木が多く荒れている。

岩や倒木で歩きづらい

2箇所ほど幕営地にできそうなスペースがあった。1時間くらい経過した辺りで左に水量の多い枝沢が見えてくるが、間違って進んではならない。徐々に登りの傾斜がきつくなり、いくつもの小滝が続く。奥ノ二俣では豪快な左俣の滝に目が行くが、右俣を右岸から登る。(左俣からも詰めることはできるが、水師まで30分ほどかかる地点に出る)

奥ノ二俣は迷わず右俣

ここから先は難しいところはないが、とくかく小滝が続く。沢も枯れてきたところで詰め上がるが、水師への尾根が少々わかりづらい。苔が生い茂って何度か踏み抜く。

トトロの森を侮るなかれ

水師からの景色は良かったが、甲武信岳までの登りがこたえる。

水師からの眺め

甲武信岳からの下りも足腰に響き、ペースが上がらなかった。釜ノ沢東俣と比べると、難易度は変わらないが疲労感は2割増しといったところだ。

(記 オヨシ)

大崩山

期 日:2021年4月3日
参加者:Lヒー、ヨッシー、オヨシ

4月3日(土)晴れ時々霧
久手牧場入口(8:50)-1650m付近(10:20)-夫婦松(11:10)-2280m付近(12:35)-大崩山(13:30〜14:00)-1650m付近(16:20)-久手牧場入口(17:05)

山スキーは昨年の春以来、山行も久々。今回、初めて山スキーリーダーを担当した。大崩山(おおくずれやま)は乗鞍岳23峰の1つで、標高2523mの山スキー初級の山である。
関越道から長野自動車道に入るも、高速から見える山々にはあまり雪が残っておらず。大崩山も滑れる状態か心配したが、ここはまだスキーができそうだ。とは言え、融雪がかなり進み、牧場までの林道は板を履いたり脱いだり。

麓の林道の雪は融けている

牧場を通り過ぎて尾根に乗ってからも、雪を求めて林道と尾根を選びながら登った。

牧場を過ぎたら尾根へ

標高1600m以降は尾根にしっかり雪があった。

1600m付近の風景

暫く急登を登っていると、同じように登っている単独のおじさんに出会う。北陸の方のようで、同行の若手から初老までの方たちは隣の猫岳を目指し、ずいぶん先に行ってしまったらしい。とにかく元気なおじさんでよくしゃべる。御歳70超えなんだとか。少々疲れを感じていた私は元気をもらった!

夫婦松、松はどこにも見当たらない(苦笑)

標高1970m辺りの夫婦松でお別れして、我々は大崩山を目指す。

夫婦松で振り返ると穂高連峰が見える!

ルートは冬季閉鎖中の乗鞍スカイラインと数回交わる。雪も付いてすんなり合流するところもあれば、道路の法面が壁のように立ち塞がって回り込まないと登れないところもあった。

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乗鞍スカイラインと合流

スカイラインを4回越えると、いよいよ大崩山へストレートに登り詰める急登が始まる。

ここから長い急登

山スキー初心者のオヨシは、1年前には急登が登れずレー子さんにしごかれていたが、だいぶ上手くなってきた。ズルズルと落ちそうになると上手く転んで防いでいた。いつの間に身につけた?凄い!私なら落ちる…

着々と登っていく

しばらくするとオヨシに異変が!腿が攣って痛そうにしている。ヨッシーに芍薬甘草湯を頂きたくさん水分を補給する。しっかり休めれば良かったのだが、下りの時間も考えると時間の余裕がなく…休憩もそこそこに、山頂を目指す。

山頂までもう少し

黙々と登りなんとか山頂に着いたのだが、のっぺり広くて標柱もなく、どこが山頂なんだかよく分からない。GPSを使って1番高そうなところに立ち大満足!

ここが山頂だよね!?(笑)
左から四ヶ岳、烏帽子岳、猫岳 ねこは滑り甲斐がありそう!

山頂でお腹を満たし、シールを剥がしていざ滑走!

ヨッシーの華麗な滑り!

来たルートを戻る予定だったが、大崩山と猫岳の谷に良さそうな斜面がありルートを少し変更。スカイラインまで快適な斜面を滑り降りる。雪質は良かった!間もなく、オヨシの足が再び痛み始める。樹林帯はなるべく避け、スカイラインや林道を使って降りることにした。大崩山はそれができるから良い。オヨシは滑りながら腿が攣って暫く動けなくなったりしたが、なんとか夫婦松まで滑り降りてきた。その後、針葉樹林帯は雪面がガタガタで滑りにくいこともあって、広葉樹林帯の滑りやすそうな雪面を求めながらグングン滑った。オヨシも良い感じでついてくる、楽しい!ふと、嫌な予感がして、そっとGPSを確認した。予定ルートから3~400mほど西にいるではないか…これはマズイ。予定ルートに戻るため、ヨッシーには偵察しながら先へ行ってもらい、オヨシを連れて後を追う事にした。樹林帯のかなり急な斜面をしばらくトラバースしなければならず、技術が追いつかなくなったオヨシは板を脱いで歩いてトラバースした。雪が緩く滑り、足が痛そうで見ていてハラハラした。なんとか予定ルートにたどり着き、ホッと一息。その後は安全な林道を滑ることにした。途中、滑ったら楽しそうな斜面があり、地図を慎重に読む。林道につながることが分かり滑走!(た、楽しい!めちゃくちゃ嬉しい!)

良い斜面でした~

山スキーでは夏山以上に読図を慎重にやらねばならないと反省した。予定時刻よりかなりオーバーして下山、まだ明るくホッとした。

(記 ヒー)

会山行A隊 巻機山

期 日:2020年12月5日~6日
参加者 Lオヨシ、こま、コバヤン、りこ、ヒー

12月5日(土)晴れ
桜坂駐車場(9:30)-六合目(12:20)-1450m付近(13:00〜13:20)-七合目(14:30)-1450m付近(15:00)幕営

コロナ禍で春から自粛が続いた会山行。冬の訪れを感じる12月上旬、ようやくトレーニング山行を実施。雪を求めて越後の巻機山へ。今回は2隊に分かれ、A隊は七合目付近で幕営し山頂ピストン、B隊(そうべぇ、みの、いずっこ)は日帰りで七合目で引き返す計画である。

豪雪地帯である六日町、例年に比べて積雪は少なめ。一週間前の偵察時はかろうじて雪山らしさが残っていたが、その後は晴天が続き、かなり雪融けが進んでしまった。仮に大雪が降ると、桜坂駐車場の最寄りの清水バス停より二つ手前の西谷後バス停付近に駐車し、そこから駐車場までラッセルしなけばならない。

各々装備を整え出発。駐車場から間もなくして井戸尾根と割引沢・ヌクビ沢との分岐。次回は沢にチャレンジしてみたい。五合目までは雪融けで登山道が泥濘み混じり、全くテンションが上がらない。メンバーの会話も徐々に減ってくる。五合目で一休み、その先の登山道を見上げても雪の姿はない。日帰りB隊はこのまま雪を踏まずに下山するのだろうか…と不安がよぎる。しかし心配は無用であった。六合目までくると脛下まで積雪があった。

A隊の幕営地として予定していた1400m付近まで登ってきたが、どこも藪が出てしまっており、もう少し先の1450m付近を幕営地とした。B隊に整地を手伝ってもらい、各々テントを設営。一汗書いてくれたB隊の下山を見送ったあと、A隊はワカンを履いて七合目のなだらかな斜面を歩行、ワカンの感覚を思い出す。日が暮れる前にテントに戻り、翌日に備えて早めに就寝する。

12月6日(日)晴れ
幕営地(5:30)-八合目(6:40)-九合目(7:10)-巻機山(8:15〜8:30)-桜坂駐車場(12:40)

翌朝は4時過ぎに起床、朝食と仕度を1時間ほどで済ませて出発。七合目から先はいい感じの積雪。

八合目から先の様子

九合目のニセ巻機山が見えてきた頃にご来光、少し霧がかっている。

九合目から見たご来光

巻機山避難小屋前で小休止を取り、山頂を目指して直登する。

雪に映る人影が面白い

斜面には山スキーのシュプールがいくつも残っている。ほどなくして山頂に到着、積雪は1m程度だろうか。風が強く肌寒いので、手早く記念撮影を済ませる。

登ってきた尾根を振り返ると、雲海が広がり清々しい。

尾根と雲海のコラボ

避難小屋まで思い思いに駆け下りる。沈む前に次の一歩を出す、斜度があるので意外とスピードが出る。確かに、この斜面をスキーで滑るのは楽しそうだ。そのままの勢いで幕営地まで戻り、テントを撤収。六合目から下は前日よりも泥濘んでいて、転倒しないように注意しながら下る。お昼過ぎに駐車場へ到着。水道で汚れた装備を洗い流し、スッキリした気持ちで帰路についた。

(記 オヨシ)

妙義山(金洞山)

期 日:2020年11月15日
参加者:Lオヨシ、カワマサ

2020年11月15日(日)晴れ
県立妙義公園大駐車場(7:30)-中之嶽神社(7:53)-堀切(9:12)-鷹戻しの頭(10:09)-東岳(10:53)-中之岳(11:07)-駐車場(11:45)

中国の桂林を彷彿させる日本三大奇景の一つ、妙義山。かつては海底だった部分が地殻変動により隆起し、浸食や風化によって今の姿になった。今回はカワマサさんをお誘いして鷹返しを含む金洞山ルートにチャレンジ!

中国の桂林のような山容

駐車場から数分、日本一大きな大黒天様が祭られている中之嶽神社の長い石段を上ると登山道に入る。

大きな大黒天様がお出迎え

ハイキングコースの石門エリアは昨年の台風19号以降に幾度か崩落があったようだ。

倒壊した東屋

見事に色づく紅葉に目を奪われながら登山道を歩いていると、稜線に出るための分岐である堀切をうっかり見逃してしまい慌てて戻る。

どこを見てもキレイな紅葉

堀切には下りでの利用を控えるように注意書きがある。確かに岩稜が小石や砂で滑りやすい。

堀切の目印はわかりにくい

稜線に出ると「この先危険!!」と書かれた看板があり、その先には鷹戻しが待ち構えている。

看板が見えたら気を引き締めて!

妙義山系では毎年10件以上の滑落事故が発生している。難易度が高い区間は、セフルビレイコードのカラビナを鎖に通して安全確保する方法もある。女坂分岐までは短い鎖場がいくつかあり、分岐を過ぎて急登を詰めたところが鷹戻しの取り付きである。

上り始めたら後戻りはできません

まずは数年前に交換されて丈夫になった三連のアルミハシゴを上る。

とても安心感のあるアルミハシゴ

その先の50mの鎖場がこのルートの核心部である。

ここから頭まで写真が撮れる体制になれませんでした

おおよそ四段に分かれており、狭いが途中のテラスで腕を休めることもできる。力み過ぎず、しっかり鎖を握って足場を確認しながら上り続ける。鷹戻しの頭に到着、景色を堪能してから鷹戻しを覗き込むと、確かに楽ではないルートであることを再認識する。

北東に見えるのは相馬岳
見下ろすと容易ではない岩壁だったと改めて認識

続いて鎖のない15mほどのルンゼを下りる。ホールドは多分にあるが足場が非常に見えにくい。ここは滑落事故が多く、不安であれば懸垂下降をお勧めする。

上りやすそうだが下るのは一苦労

休む間もなく、次はルンゼ内二段25mの下り。ここには太く頑丈な鎖が付いているが岩壁に対して垂直に沿っておらず、鎖に頼り過ぎると岩壁から離れてバランスを崩してしまうので要注意である。

鷹戻しに劣らないルンゼの下り

金洞山の最高峰・東岳に向かっていくとコルから石門エリアへのエスケープルートがある。エスケープと言っても足場が悪く下るのも一苦労のようで、ここも懸垂下降が良いようだ。ほどなくして東岳山頂に到着、そこから妙義山系の全容が見渡せる。

麓の様子も良く見える

まだまだ鎖場は終わらない。三段30mを下り、断続的な50mの岩稜帯を上り返した先には最後のピークである中ノ岳がある。

上りとしては最後の鎖場

山頂には祠が祭られている。

中ノ岳山頂の祠

ここから石門エリアに向かって下るが、またもやルンゼ内の鎖場から始まり、所々にFIXロープが張られているザレ場をトラバースする。

鎖場で一気に高度を下げていきます
FIXロープは黄色なので見逃さないように

最後まで集中力を切らさぬように。石門エリアまで戻ると、朝とは違って紅葉狩りに来た多数の観光客の姿があり、駐車場も空き待ちの列ができるほど満車であった。
夏の妙義山はとても暑く(丹沢ほどではないが)ヒルもいるので、やはり涼しくなる秋が良いだろう。また妙義神社側の相馬岳ルートは金洞山ルートよりも難易度は下がるが油断してはならない。全て縦走する場合は余裕をもって10時間は見ておくこと。

(記 オヨシ)

加加森山~池口岳~鶏冠山

期 日:2020年11月4日~5日
参加者:ヨッシー

南アルプス南部の光岳以南を深南部または最深部と呼ぶことがある。1985年の春山合宿では小無間山から信濃俣を経て光岳小屋まで来た。1992年に易老沢から光岳、1997年に池口沢から池口岳北峰に登っているが加加森山と鶏冠山は初めてだ。

2020年11月4日(水)快晴
池口岳登山口(7:12)-黒薙(9:12)-ザラナギ(10:24)-JCT(11:55)-加加森山(13:35)-JCT(15:02)-池口岳北峰(15:22)(幕営)

以前来た時の林道終点地点にある登山ポストに登山届を投函する。その先の未舗装の林道を登山口まで進み、広い路肩に車を停める。他に車は無い。池口岳北峰まで6時間25分の標識に身構えてしまう。行動分を含め5リットル超の水が重い。牛首までは緩やかな登りが続き、尾根の北側の樹間からは「日本のチロル」と呼ばれる下栗の里が見える。牛首の先に小さい下りがあるが黒薙まで順調に高度を稼ぐ。黒薙は尾根の南側が崩壊しているが、登山道までは崩れていない。ここで目指す池口岳と鶏冠山が姿を現す。黒薙(1858m)から1983mピークまで緩やかな登り下りとなり、ザラナギ、テント場、水場下降点と続く。

ザラナギより左奥が加加森山

テント場は尾根の広くなった場所にあり、登山者の数からして十分すぎる広さがあるが快適な場所は少なそうだ。水場もかなり下らなければならないようである。下りのちょっとした岩場が続くとJCTへ300mの登りになる。JCTで予定を変更し加加森山を目指す。なぜかこの時だけメール送信が出来た。不要な水分をデポする。JCTから下りきった辺りにも水場下降点の標識があった。樹林が切れ、目指す加加森山や光岳、北の山々が見える。途中に広い草原のような所があり、テントを張ったら気持ちが良さそうだ。登山道が緩やかに東から北に向かう辺りから樹林帯になる。光岳と加加森山の分岐点から一足で加加森山山頂。予想通り展望は無い。

加加森山山頂

証拠写真を撮り帰路に就く。往路では気にしていなかった池口岳やさらに南部の山々が見える。信濃俣や百俣沢の頭が見えていたはずだがよく分からなかった。JCTでデポを回収し池口岳を目指す。

左加加森山の右に光岳

霧氷が落ちて白くなった道を一登りで池口岳北峰に到着。

池口岳北峰

やや広い山頂の片隅にテントを張る。この日は寒い一日で、登り始めの頃こそ汗をかいたが、途中からは汗も出ず体が冷えてくる始末。上着を着ていたが体が冷え切ってしまった。焼酎のお湯割りでは体が温まらず、FDのリゾットを食べてやっと体が温まった。寒い時は汁物が一番というのが身に染みた一日であった。

2020年11月5日(木)晴れ
幕営地(6:10)-池口岳南峰(6:38)-鶏冠山北峰(7:59)-鶏冠山南峰(8:34)-鶏冠山北峰(9:11)-池口岳南峰の肩(10:38)-池口岳北峰(11:07~11:45)-ザラナギ(13:13)-黒薙(14:23)-池口岳登山口(16:13)

昨夜は思ったより冷えこまなかった。冬用のアンダーウェアを着込み、内張りとリゾットの効果か。フライシートも濡れていない。ツエルト代わりに持っていく。池口岳南峰への道は細いが迷うことはない。池口岳南峰から鶏冠山へのルートは山頂から少し戻った所にあるポールが目印だ。少し分かりにくいがヤマレコのGPSログが役に立つ。ルートか獣道か分からない狭い尾根を下るが危険な所はない。目印のテープは少ない。下りきった辺りから尾根が広くなり笹が多くなる。笹平は開けており眺望が良く、膝丈位の笹原の中を獣道が縦横に走っている。

笹平より鶏冠山

笹平から鶏冠山への登りに明瞭な踏み跡は無く、適当に見当をつけて登るしかない。目印も少なく気休めにもならない。薮漕ぎという程でもない斜面を登りきると山頂の一角に出る。シャクナゲ沢ルートからと思われる踏み跡と合わすと鶏冠山北峰に到着。

鶏冠山北峰

北峰より南峰の方が高いので足を延ばすことにする。鞍部まで下ると固定ロープのある5メートル位の岩場になるが、足場も手掛かりもしっかりしている。その先も右側が切れ落ちた岩稜になるが、灌木がしっかりしているので慎重に行動すれば問題ない。最後に凍りかかった草付きの斜面を登りきると鶏冠山南峰にたどり着く。

鶏冠山南峰

中ノ尾根山へのルートは更に不明瞭な踏み跡が続いている。下りの草付きに備えチェーンアイゼンを着ける。これのおかげで安全に下ることが出来た。北峰に戻り、適当に笹平を目指して下る。余談であるが、笹平から右手の笹薮を下れば水場があるそうで、往復30分ほどらしい。笹平から池口岳南峰の登りになり、狭い尾根筋を登っていると右手の沢から水の流れる音が聞こえた。目を凝らすと水が流れているのが見える。距離にして30メートル程か。ただ無事に沢に降りられるかどうかは分からない。このすぐ後に単独の男性と会う。日帰りで池口岳と鶏冠山の周回コースを踏破するそうだ。元気者である。池口岳北峰に戻りテントを撤収し下山開始。

池口岳北峰より鶏冠山と笹平

下山目標午後4時、日没までには下山したい。岩場を過ぎた所で二人パーティーが登ってきた。ザラナギの少し上部にテントを張って池口岳を往復するそうだ。二日間で出会ったのは三人だけだった。

黒薙より中央が池口岳右鶏冠山

下山口まであと一時間という辺りで左の足首が痛みだす。何とか車までたどり着きヤレヤレ。かぐらの湯は定休日なので阿南町のかじかの湯で汗を流し、駒ヶ岳サービスエリアでソースカツ丼を食して帰宅する。
加加森山と光岳の間が宿題になってしまった・・・。

(記 ヨッシー)

荒川水系中津川 大若沢

期 日:2020年8月29日
参加者:Lオヨシ、なべたけ、わたゆき、ヒー

2020年8月29日(日)晴れ
大若沢休憩所駐車場(8:00)-金山沢出合(9:10)-二俣(10:20)-長滑沢出合(10:50)-駐車場(12:50)

大若沢は埼玉県の『彩の国ふれあいの森』の敷地内にあり、「学習の森」(大若沢休憩所)駐車場から遊歩道を通って入渓する。以前は散策目的でも遊歩道を使えば魚止ノ滝まで行くことができたが、昨年の台風19号の影響により広範囲にわたり木道や橋が崩壊し、現在も散策は難しい状態になっている。沢そのものはほとんど被害を受けていない。大若沢は巻かずに登れる滝が多く、所要時間も半日程度であるため、初級者におススメである。

序盤の勘兵衛ノ滝から不動滝までは、滑りやすい箇所もあるがウォーミングアップにはちょうど良い。

勘兵衛ノ滝 右岸から登る
大釜の滝 これも右岸から登る
こもれびがキレイ

不動滝は遡行図に残置支点があると記されていたが、それらしきものは見つからなかった。

不動滝 登り方を確認
不動滝 一番滑りやすいところ

続く中盤はキレイなゴルジュから始まる。

金山沢出合 この滝は簡単に登れる

まず金山沢出合の先にある12mのトイは、「高巻きしてトイの先へ懸垂下降した」という記録をいくつかネットで目にしたところである。

トイ ここから左方向に登る

水量によるかもしれないが、沢に沿って登っても特に危険は感じず、突っ張りながら詰めていく。その後しばらくはナメや小滝を堪能しながらゆっくり進む。

終盤の魚止ノ滝から直滝までは、弱点を突いていけば難しくはない。魚止ノ滝は右岸に取り付いて登るのが一般的なようだが、滝を横切って左岸に渡ったのちに滝の裏側を這い上って右岸に取り付くこともできる。それなりに水を浴びるが何だか楽しい。

魚止ノ滝 左岸から右岸へ斜めに登っていく

直滝は左岸でも右岸でも高巻きできるようだ。左岸には残置スリングあり、これをアブミとして利用すれば楽に登ることができる。

直滝 左岸を高巻く

長滑沢出合から先も奥の二俣まで遡行は楽しめる。勢いでつい進み過ぎてしまい、慌てて長滑沢出合まで戻る。

長滑沢出合の目印

下り左手を見上げると、わかりづらいが5mほど登ったところに遊歩道がある。途中、崩れている箇所もあるが、1時間弱で勘兵衛ノ滝まで戻ることができる。

遊歩道 沢下りは大変なのでこんな状態でもありがたい

奥秩父としてはアクセスしづらい場所だが、景色も良くしっかり滝登りも楽しめる沢であった。

(記 オヨシ)

中川川水系 マスキ嵐沢

期 日:2020年8月15日(日) 
参加者:Lなべたけ、わたゆき、ザッキー、かわまさ

8月15日(土)晴れ
大滝橋駐車場(8:15)-マスキ嵐沢出合(9:00)-箒沢権現山(11:30)-南西尾根-マスキ嵐沢出合(12:45)-大滝駐車場(13:30)

お盆休み後半、小川谷廊下の遡行を考えていたが、昨年の台風の影響で難易度がややアップしていると情報があり、西丹沢の入門の沢であるマスキ嵐沢に変更。新型コロナの影響などで、なかなか山行を共にできないでいたお久しぶりのザッキーもメンバーに加わり、酷暑を忘れる、楽しい沢登りだった。

道の駅山北に7:00に集合。大滝橋駐車場へ。駐車スペースはおよそ3台。滑り込みで駐車することができた。駐車場は河原のすぐわきで、周辺の河原は幕営に良さそうだった。
登山道から出合へ。入渓ポイントで準備をしていると、数人の後続パーティーがあった。一番乗りで入渓。

美しい渓相
巨岩帯
エメラルドグリーンの釜

先行者がいないこともあり、水流はとても綺麗で、木漏れ日は沢をエメラルド色に照らして、美しさを際立たせていた。確か、途中の8m滝でわたゆきをロープ確保したが、それ以外はロープを出すことがなかった。

8m滝を慎重に登る

最後の10m涸れ滝は、右わきから巻いて登った後に、残置の支点を発見。涸れ滝の登攀は、次回の楽しみになった。

真夏の沢日和、沢は美しく、楽しく、あっという間の遡行だった。ルートファインディングはミスなし。沢の終了点の稜線から箒沢権現山までは、かなり踏まれている道で、ここも危なげなし!山頂には、公園にあるようなしっかりした椅子が設置されていたのが意外だった。下山路は、最近の記録でよく使われていた、ルートファインディングミスがなければ、いちばん早くて楽そうな南西尾根を選択。頂上台地の西側から伸びている尾根で、よく使われている通りトレース(防護柵のわきからついていた)はそこそこあり、わりと分かりやすかったと思う。頂上台地からは、南西〜西〜南西にほぼ尾根状にトレースがついていて、1020m付近のジャンクションのコルまで下る。コルからは、南向きの尾根を出合まで。
駐車場に戻り、河原でしばらく涼んでから帰路についた。西丹沢からは、帰りの国道246がいつも通り渋滞で相模原に帰ってきたのは、夕方になった。充実の夏の1日だった。

(記 なべたけ)

塩見岳

期 日:2020年3月20日~22日
参加者:Lオヨシ、コバヤン、みの、こ~平、ヒー

3月20日(土)曇りのち晴れ
相模原(6:30)=松川IC=鳥倉林道冬季閉鎖ゲート(駐車スペース)(10:30)-越路ゲート(12:10~12:20)-鳥倉林道登山口(13:00)―三伏峠小屋(16:50)幕営

無積雪期は越路ゲートの駐車場に停められる鳥倉林道だが、積雪期の12下旬から4月下旬までは6km手前の冬季閉鎖ゲートまでしか車で入れない。その際は狭いスペースに停めることになるため1台で行くことにした。5人分の大型ザック、ピッケル、ストック、ワカン等と共同装備。大荷物であることは自覚していたが、予想以上に積み込みで苦戦。どう見ても荷台はキャパオーバーのため、潔く後部座席の足元や膝の上を使うことに。予定より30分以上遅れて出発した。
7時近かったが圏央道の恒例渋滞には捕まらず、順調にその先の中央道へ。松川ICから大鹿村までの道のりは今季3回目、妙に親近感がわく。林道手前の最後の店舗である道の駅『歌舞伎の里大鹿』でお酒やおつまみを購入。全国的に流行し始めたコロナウイルスの影響は地方の道の駅にも波及、「マスク未入荷」の貼り紙があった。冬季閉鎖ゲートまでは対向車には遭遇したくはない道幅で、縁石は切れ落ちていないものの落石が散見される。予想に反して凍結はしていなかったが、予定より1時間遅れで冬季閉鎖ゲート手前に到着。既に3台駐車していたが、1台分のスペースはあるため縦列で停める。

冬季閉鎖ゲート手前に駐車

コバヤンは冬季に燕岳へのアプローチである宮城ゲートから中房温泉までの林道をソリを使って歩いた経験から今回もソリを持参。しかしながら見渡す範囲に積雪はなく、早々にソリの出番はないと判断された。

積雪がない林道

2km先の夕立神パノラマ公園に向かう間、普段着の観光客3団体とすれ違った。あいにくの曇り空であったためか、パノラマ公園から展望を諦めて戻ってきたのだろう。パノラマ公園で小休止した後、越路ゲートまでの4kmと登山口までの3kmをひた歩く。

越路ゲート ここまで車で来たかった

久し振りに聞くみのさんとコバヤンの息の合った掛け合いに楽しませてもらいながら登山口に到着。昨年11月に来たときも自転車1台が置かれていたが、今回は2台あった。大型ザックを背負っての運転も決して楽ではないが、林道も行程の一部なので自分の足で歩くべきではないだろうか。

登山口(フレーム外だが右側に自転車)

登山口から三伏峠までは登り一辺倒となる。林道は所々凍結している程度で積雪はほとんどなかったが、登山道は序盤から積雪があるため、早々にアイゼンを着ける。三伏峠までの登山道は10区画に分かれており、時折[○/10]の行程標識が出てくる。等間隔ではないが、3区画を目安に小休止を取りながら登る。[3/10]地点から三伏峠までは登山道が北に面しているため、高度が上がると共に雪深く風も強まるため、防寒着を身に付けた。

谷側を注意しながらを歩く

幾度か沢筋を横切るようにトラバースするが、筋沿いに雪崩れた形跡があるため一人一人慎重に通過する。[7/10]地点より先も傾斜は緩まず、息を切らさぬようペースを乱さず淡々と登る。[8/10]地点を過ぎると、今は閉鎖されている塩川ルートとの分岐が現れる。みのさんは若い頃に塩川ルートから登った経験があるそうだ。三伏峠までおよそ200歩の場所に登山者を励ます看板が足元にあるのだが当然のように雪に埋まって見えない、数分で三伏峠に到着。

三伏峠の看板も埋もれそう

冬季は三伏峠小屋の新館の一画が解放されるが、既に満員状態であった。本来のテン場は膝上辺りまでの積雪に覆われていたので、我々は三伏峠小屋本館近くの樹林帯を整地してテントを2張り(2テンと4テン)手際よく設営する。

腰下くらいまでの積雪
きれいに雪化粧した塩見岳

雪がしまっておらず、圧雪に難儀した。夕飯はヒーさん特製ポトフ、いつも通り賑やかに過ごした。翌日は5時出発の予定だったが、疲れと強風予報を鑑みて、出発を1時間遅らせることにした。

3月21日(日)晴れ
三伏峠小屋(6:50)-三伏山(7:25)-本谷山(8:40~8:50)-塩見小屋手前(12:15~12:35)-塩見岳(14:30)-塩見小屋手前(16:00~16:15)-本谷山(18:20)-三伏山(19:20)―三伏峠小屋(20:10)幕営

6時に出発するため、4時半に起床して5時から朝食を取る予定であったが、こ~平が仕込んできてくれた冷凍挽肉キーマカレーが全く融けてくれない。気温が低く自然解凍が進まなかったのが誤算であった。湯煎して結果的に1時間ほど準備に要した。朝は時間勝負なのでメニュー選定や工程には留意しなければならないと反省。

今日の天気も清々しい

塩見小屋まではワカンとストック、山頂往復はアイゼンとピッケルを使用する計画で各々準備。出発しようとしたところ、みのさんがテントに忘れ物をしたとのことで、他のメンバーはゆっくり先に歩くことにした。幕営地付近から延びているトレースを頼りに15分ほど進むが、何か違和感があった。塩見岳と烏帽子岳との分岐がいつまで経っても現れない。そう思った矢先、頼っていたトレースがなくなってしまった。どうやら塩見岳を眺めるために小屋から東に向かったパーティーが付けたトレースのようだ。

ルートは間違えたが確かに良い景色

目指していた分岐は、小屋から塩見岳に向かう際は誰もが通過する分岐であったため、トレースは信頼できると思い込んで方角や地形図を確認せずに進んだことが良くなかった。気を取り直して戻ると、程なくして右手には以前小屋があった跡地を経由するルートが見えてきた。ほぼ踏まれておらず沢筋で雪が吹き溜まって危険なためこのルートは使わず、三伏峠小屋近くまで戻ることにした。この往復でのロスは10分くらいと感じていたため、みのさんにはすぐ追い付けると思ったが一向に姿が見えない。そうこうしているうちに三伏山に到着してしまった。

三伏山への稜線

呼び掛けながら進むが全く返事が聞こえない。そのまま1時間ほど経過し、先ほど選択しなかった吹き溜まりルートとの合流点となるコルに到達。可能性は低いがみのさんが小屋から急いで追い掛けて来ていることも想定し、こ~平には急ぎめで先に進んでもらい、残りのメンバーは少しペースを落として歩くことにした。間もなくこ~平がみのさんと合流、その連絡を受け、15分後に全員集合となった。気を取り直して行動再開。樹林帯の中でアップダウンを繰り返しながら本谷山に到着。

本谷山からの眺め

11月の山行で幕営した場所だが、今回は雪が積もり標識が見えない。先にそびえる塩見岳を暫く眺め、塩見小屋を目指す。長い下りがあり、50~60mほど標高を下げた辺りに休めそうな場所があったので長めに休憩を取る。ここから登頂してテントに戻ってくるまで約7時間。コバヤンは調子が優れないとのことでテントに戻ることに、夕食の下準備等をお願いした。他のメンバー4名で塩見岳を目指す。
30分ほどで権右衛門山に続く樹林帯の手前に到着。そこから目視できるトレースは北北東方面と北東方面の2本。後者が本来の登山道に思えたが、くっきりしたそのトレースはなぜか東へ伸びて急勾配で下っており、権右衛門沢へ向かっているようだった。すぐに引き返し、もう一方の今朝付けられたと思われる新しいトレースに沿って進むことにする。樹木の間を上手い具合に抜け、徐々に高度を上げながら左手の尾根に詰めていく。大きく東に進路を取った辺りで、3人組パーティーが戻ってきた。聞けば、そのパーティーが朝早くから行動して付けたトレースであった。塩見岳山頂を目指したがラッセルに苦戦を強いられ、今日中に下山するには時間切れとなり撤退してきたとのこと。我々の先には2パーティーが先行しているそうで、トレースのお礼をし先を急いだ。1時間ほど経つと尾根に出る急登が現れる。交代でラッセルしながら登り詰めると合流点にたどり着く。地形図を確認したところ、北から権右衛門山を巻く塩見新道ルートと三伏峠からの登山道が合流する場所だった。積雪期は今回の尾根沿いにルートを取った方がラッセルの負担が少ない。

急登を越えると視界がひらける

合流点から暫く進むと森林限界を抜けて塩見小屋手前のひらけた場所に着く。ここをデポ地点として、しっかりと食事・水分を取り、装備をピッケル、アイゼン、ハーネスに付け替える。ロープは最後尾の私が持ち、気持ちを引き締めて塩見岳へ。

装備を付け替えて再び登り始める

塩見小屋がすっかり雪に埋もれてしまい、何とか屋根の一部が見えている程度。

雄大な塩見岳が現れる

天狗岩までの稜線では常に強い西風が吹き付け、耐風姿勢が解除できずなかなか前に進めない。

強風に耐えながら進む

ようやく天狗岩の基部に着く。見上げると露岩と氷が混ざり合う一筋縄ではいかないコンディションであった。ここから塩見岳山頂までは鎖やハシゴが一切なく、アイゼンでの登攀経験がないとリスクが高い。ロープを使えば登頂を希望していたこ~平をフォローできると思っていたが今回は断念、みのさんと共に一足先に三伏峠へ戻ることとなった。こ~平が凍結箇所の下りで滑らないか心配していたのでロープはみのさんに渡し、私とヒーさんと二人で山頂を目指す。

塩見小屋付近で記念撮影、画になりますね~

天狗岩まではトラバース気味に高度を上げていく。天狗岩の山頂にはよらず横切り、一旦鞍部に下る。見上げると荒々しい塩見岳山頂がそびえ立つ。

見上げると塩見岳山頂が見える

積雪期は右から巻いて登るルートを取るが、核心部のルンゼに向かって比較的直進のトレースがあり、足元の状態も良かったのでそのまま進んだ。ルンゼでは先行の7人組パーティーがロープを使って降りている最中であったので、我々はルートを少しずらして岩壁を登った。時折吹く強風をやり過ごしながら塩見岳の西峰を無事に登頂。標識が完全に埋もれていたので、ピッケルで少し掘り出して記念写真を撮った。

念願の登頂!
山頂からの眺めは良いですね~

強風が止まないのと14時を過ぎていたことから東峰には向かわず、急いで戻ることした。

焦らず慎重にルートを選びます

先ほどのパーティーが苦戦していたルンゼにはしっかりキックステップの跡が残っていたので、ピッケルとアイゼンをしっかり雪面に食い込ませながら慎重に下る。無事に通過できたが、先ほどみのさんにロープを渡してしまったことを後悔した。(こ~平はみのさん指導のもと、ロープを使用せずに下りることができたそうだ)

核心部以外でもピッケルとアイゼンをしっかり食い込ませる

1時間半ほどで塩見小屋先のデポ地点に到着。緊張が続いてお腹もすいたので軽く食事を取り、またワカンとストックに替えてテントに向かう。登りでの体力消耗は想定以上で、下りでも思うようにペースが上がらない。日の入り時刻の17時55分までに三伏山くらいまでたどり着きたかったが、本谷山で日没を向かえてしまった。

夕日がきれい、まだ先は長い

三伏山を過ぎると三伏峠方面にうっすら明かりが見えたので少し安堵した。

暗闇の中、塩見岳を振り返る

テントに到着するとお腹をすかしていたメンバーから温かい言葉をかけてもらった。急いで夕食の大豆キーマカレーを作った。慌てたのと疲れもあり、カレー粉の分量を間違えて激辛カレーとなってしまった。皆さん、頑張って食べてくれてありがとうございました。

3月22日(月)晴れ
三伏峠小屋(7:20)-鳥倉林道登山口(9:30~9:40)-鳥倉林道ゲート(10:20~10:30)-鳥倉林道冬季閉鎖ゲート(駐車スペース)(12:20)

天気予報は午後から下り坂、それまでには下山できるよう5時半起床。前夜は疲れきっていたので周りのいびきも気にならずぐっすり眠れた。朝食は手早く作れる塩ラーメン、カロリーは控えめだが下山のみなので丁度良い。外に出て周囲を見渡すも既に他のパーティーの気配はない。テントを撤収し、アイゼンとストックで下山開始。初日よりも雪は融けているので谷側に足を踏み抜かないように注意しながら足早に下る。淡々と登っていたので気にならなかったが、[6/10]地点から三伏峠までは傾斜が緩やかではなく、落差で下山スピードもつい上がってしまう。アイゼンを外すタイミングを伺っていたが、そうこうしているうちに登山口に着いてしまった。

先は長いので小休止を取りながら

ここから再び9kmの林道歩きが始まる。皆は談笑しながら歩いているが、私は足裏に痛みがあった。痛み止め薬を飲んだが全く効かず、衝撃を和らげるために雪の上を歩いたり、力の入り方が変わるように後ろ向きで歩いたりした。とにかく耐えに耐え、皆から遅れること30分以上、ようやく駐車スペースに到着。足裏を見てみると、両足共に踵と指の付け根の皮が剥けてしまっていた。厚手の靴下が動いて擦れ続けたのが原因であった。長時間の林道歩きでは肌にフィットするインナー靴下を履いて摩擦を軽減させる対策が必要であることを身をもって学んだ。
今回は春山合宿の下見を兼ねていたので、しっかり現地の情報収集もできた。南アルプス南部はアクセスが良くないが、人工物も少なく大自然を堪能できるので是非お薦めしたい。

(記 オヨシ)

会山行B隊 赤岳天狗尾根~ツルネ東稜

期 日:2020年2月8日~9日
参加者:Lみの、オヨシ

2月8日(土)曇りのち晴れ
相模原(10:00)=松川IC=美しの森駐車場(12:30)-天女山分岐(13:30)-本谷下降点(14:10)―出合小屋(15:20)幕営

私が入会して間もない一昨年の冬、例会報告で耳にした『八ヶ岳の天狗尾根』という響き。当時はどのような尾根か詳しくは知らないが登ってみたいという衝動にかられたことを今でも覚えている。暁ではここ数年で天狗尾根に二度アタックしている。

2016年3月(ナベタケ、コバヤン、ガク)
2018年2月(ガク、みのさん)

いずれも完登されているが、記録を見る限り、一筋縄ではいかなかったようである。今回の山行では経験者のみのさん先導で挑戦することになった。

昨年の10月にも訪れた赤岳・真教寺尾根の麓である美しの森駐車場から始まる。初日は出合小屋までの行程としたので登山としては遅めのスタート。広々とした駐車場には先行パーティーのものと思われる車が5台ほど停まっていた。冬は営業していない観光案内所裏手の舗装路を西に向かうと、すぐに川俣林道へと入る。今年は雪不足のため林道にはあまり雪は積もっていない。数ヵ所ある分岐付近には道標や看板があるので積雪が多くても迷うことはない。林道の半ばを過ぎた辺りで天狗尾根が見えてくると気分も高揚してくる。

林道から見える赤岳

林道は川俣川に近いので何ヵ所か支流を渡渉する。林道の終盤は樹林帯で、抜けると辺り一面が雪で覆われている地獄谷に到着する。

林道の終点、地獄谷

そこから先は5つの堰堤があり、左岸もしくは右岸のハシゴや階段で越えていく。間もなくすると、初日の目的地である出合小屋が見えてくる。

ぽつんと出合小屋

小屋は2~3テンを5張りくらい設営できる広さだが、既に大部分が使われていた。一番奥に2テンがギリギリ張れるスペースが残っており、そこに設営した。

テントで込み合う小屋の中

翌朝は日の出前に行動開始予定であったので、30分ほど周辺を偵察することにした。仕度を終えたみのさんは一足先に行き、暫くして私も後を追った。小屋から数十mのところに分岐があり、左手が地獄谷本谷(ツルネ東稜)、右手が赤岳沢に通じる。赤岳沢への道を進むと渡渉が数ヵ所あるので早朝は気を付けねばならない。暫く進むと沢の左岸に到達、赤布が見えるそこが天狗尾根への取り付きである。しかし、トレースが沢沿い方面や直登方面へと数本付いており紛らわしい。赤布もそれぞれの方面にあるため、単独行動での偵察はここまでにして小屋へ引き返す。分岐まで戻ると、本谷方面から10名ほどのシニア中心のパーティーが下りてきた。装備からアイスクライミングを楽しんでいたようで、小屋にテントを張っていたのも彼らであった。間もなく、みのさんも本谷方面から下りてきた。日も暮れてきたのでテントに入り夕食と宴の準備。美濃戸でアイスクライミングをしていたA隊が予定時刻を過ぎても行者小屋に着いていないとの連絡があり心配したが、体調がすぐれないメンバーがいて時間を要したとのことだった。一方、出合小屋では例の大人数パーティーが盛り上がっており、遅くまで騒いでいた。我々は翌朝3時起床なので20時に就寝した。

2月9日(日)晴れ
出合小屋(4:20)-カニのハサミ(7:20)-第一岩峰(8:00)-第二岩峰(9:00)-大天狗(9:20)-天狗尾根ノ頭(10:40)-ツルネ南峰(12:00)-出合小屋(14:40)-美しの森駐車場(16:30)

3時過ぎに起床、周りのテントはいびきの大合唱だった。朝食のラーメンを美味しくいただき、身仕度を整える。昨日最後に小屋へ入ってきたご夫婦パーティーも我々と同様に早朝出発のようだ。月明かりもなく、ヘッドライトを付けても視界が悪い。

暗闇の中、行動開始

昨日の偵察を思い返しながら、天狗尾根の取り付きまでは踏み抜きに注意しながら進む。取り付きに到着し、複数あるトレースの中で一番はっきりしていた沢沿いに向かうが、数十mでトレースが消えた。気を取り直して直登方面へ進む。雑草の上に雪がついているため滑って登りづらい。赤布の間隔が広いためか、先行者の道迷いで付けられた分岐トレースが相当あった。方位や地形を確認しながら暫く樹林帯の中を進む。取り付きから1時間ほど経つと左右が切れ落ちたナイフリッジに出るが、暗闇で周囲の様子が全く確認できない。

注意してナイフリッジを歩く

6時を過ぎると徐々に明るくなってきたが、まだまだ急登は続く。出発から3時間で岩稜帯に到着、カニのハサミが見えてきた。

カニのハサミ

確かにハサミ以外のネーミングが思い浮かばないフォルムだ。ハサミの間を直登することもできるようだが、我々は登ることなく左から巻く。続く10mほどの岩壁はダブルアックスで難なく登る。間もなくして一つ目の核心部である第一岩峰に到着。ここは岩壁を直登して稜線に抜けるルートと右手方向にある残置ロープを使ってトラバースしてから30mほどのルンゼを登るルートがある。今回は後者を選択。草の上に積もった雪はしまっておらず、トラバースすら不安を感じる。みのさんが先に行き、私は残置ロープ終端の立木でセルフビレイを取って待機した。

中央付近に見えるのが残置ロープ

ルンゼの頂上にある立木から40mロープを降ろしてもらう。みのさんから合図があったのでセルフビレイを解除してルンゼに向かうが、ロープの末端がどこにも見当たらない。見上げると5mくらい上の出っ張りに末端が引っ掛かっていた。慎重に登って末端に近付くが、足元が安定しない。さらに末端だと思ったものはロープの途中がU字になったもので、末端そのものはさらに5m上にある。ひとまずロープのU字部分を手に取り末端を引き下ろしたところ、急にロープが上がり始めた。どうやらみのさんが引き上げの合図を送ったと勘違いされたようだ。ルンゼで私の身体は反っており、焦ってストップの声も出せない。何とかハーネスにロープを括り付けカラビナで補助的に固定するのがやっとだった。第一岩峰を登りきり、安全な場所でロープを外す。みのさんからロープの取り付け方がおかしいことを指摘されたので事情を説明した。声で合図を送ることが基本だが届きづらいときもあるため、代替手段も事前に擦り合わせておく必要がある。ロープを片付けていると小屋で一緒だったご夫婦パーティーが登ってきた。我々は邪魔にならぬよう先を急いだ。
続いて5mほどの岩峰が立ちふさがる。無積雪期ならロープなしで直登もできそうだが、今回は右から巻くことにした。足元の雪が想像以上に緩く、切れ落ちた右手側に寄らないよう慎重に進む。無事に通過すると、その先には第二岩峰と大天狗がそびえ立つ。

第二岩峰(左)と大天狗(中央)

第二岩峰は右から巻けるので難易度は低い。

第二岩峰を右から巻く

次はいよいよ大天狗、二つ目の核心部である。ここは岩壁を直登して大天狗の頂上を目指すルートと右手に少し下りながらトラバースして東側の狭いバンドに上がるルートがある。今回は後者を選択し、雪面をトラバースしてバンドの下に向かう。体感的にはほぼ垂直の岩壁を10m近く登らねばならず、万が一踏み外すと相当な距離を滑落しそうな場所である。まずはみのさんからアタック。思ったよりアックスの引っ掛かりが悪く、一手一手慎重に登る。少しハングする箇所があり一瞬ヒヤッとする場面もあったが、無事にバンドに到達。すぐに支点構築しロープを降ろしてもらう。安全確保されているがアックスが頼りなく、今回の山行で一番恐怖を感じた。バンドに到達して安堵したが、肝心のセルフビレイを取り忘れていた。いかなるときも気を緩めてはならない。小天狗を過ぎた辺りの開けた場所で一休み。大天狗と小天狗の間から富士山が見える、なんとも言えぬ絶景だ。

大天狗(中央)と小天狗(左)と富士山

しっかり腹ごしらえをして登山道への合流点である天狗尾根ノ頭へ向かう。

天狗尾根ノ頭へ

登山道に合流

天狗尾根ノ頭から先の登山道は、キレット小屋手前まで急峻なルンゼの下りとなる。歩きづらいだけでなく、下から強風が容赦なく吹き上げてくる。小石混じりの風が身体を叩きつけ、目も開けづらい。

急峻なルンゼを下る

キレット小屋の近くまで来ると風は穏やかになる。そこから樹林帯を登り返すとツルネの北峰と南峰にたどり着く。

樹林帯の先がツルネ

ツルネで記念撮影

後日談だが、C隊が赤岳から天狗尾根を見下ろした際、我々の想定ルートにトレースがほとんど見えなかったので心配してくださったようだ。
ツルネ南峰から先は東稜を下って出合小屋に向かう。ここからはみのさんに代わって私が先頭を歩く。

ツルネ東稜を下る

ツルネ東稜には支稜がいくつかある。特に右手の旭岳との間を流れる上ノ権現沢に下る支稜に入ってしまうと急峻な登り返しに難儀すると聞いていた。強風でトレースはかき消されているので先まで目を凝らす。

道標が見えるとあと少し

1時間ほど進むとしっかりした道標が現れ、そこから15分でツルネ東稜の取り付きだ。

ツルネ東稜の取り付き

出合小屋までは再び踏み抜きに注意して歩く。出合小屋に到着、あれだけ混み合っていた小屋の中はほぼ空っぽで、天狗尾根に向かった我々とご夫婦のテントだけが寂しそうに残されていた。手早くテントを撤収して装備もザックに片付け、前日通ってきた林道に沿って美しの森駐車場へ向かう。時折、後ろを振り返って天狗尾根を眺めて余韻にひたる。1泊2日の工程で余裕をもって挑むにはパーティーの人数は2名がベスト、多くても3名であろう(しっかりメンバーシップが築けていることが前提)。来シーズンにパートナーを連れていく約束をしているので、この1年はしっかりロープワーク技術を磨き、安全にリードできるよう経験を積み重ねていこうと思う。

(記 オヨシ)