A隊】槍ヶ岳・三俣蓮華岳
期 日:2024年8月10日~8月13日
参加者:Lコイケちゃん、レジェンドM、おんちゃん
8月10日(土)晴
七尾山荘(前日22:00)仮眠=(タクシー)高瀬ダム(6:00)~林道終点(7:00)~名無避難小屋(7:30)~湯俣山荘(8:30)~水俣川出会(8:50)~千天出会(11:15)~北鎌沢出会(13:30)~北鎌コル(18:00)幕営
高瀬ダムまでの移動は、タクシーだが林道が崖崩れて車両通行できず、七尾山荘でタクシーに乗り、タクシーのUターンが出来る箇所で途中下車して1.4Kmほど徒歩で通過し、その上部で再度タクシーに乗車せねばならない。下段に2台、上段に2台の配車で尚且つ夏休みのスタートとあって、タクシー乗り場は長蛇の列で有った。おんちゃんが気を利かせて、乗車の列に早めにザックで順番をキープしてくれたので、比較的早く乗車することが出来たが、いきなりの時間のロスである。随分と後ろに並んでいたパーティは、痺れを利かせて徒歩で向かう組もあった。タクシーは少ないが、会社は時間が出来たら上高地へ応援に来いと言われているとタクシーの運転手さんがぼやいていた。
高瀬ダムで2台目のタクシーを下車し、高瀬ダムの不思議な白みがかった湖面を見ながら、「犬神家の一族のすけきよの足が生えてそうだ」などとくだらない話で気を紛らわせながら、林道を1時間ほど進んだ。そして、登山口からはほぼ水平の山道を歩き水俣山荘へ。林道では途中いくつか長いトンネルを抜けたが、ヘッドランプなしでは歩けぬほど暗かった。去年大改装した水俣山荘は、白と木目を生かしたデザインで随分とおしゃれだ。
おしゃれな湯俣山荘
店内にはバーカウンターもある。働いている方々も若くあか抜けた印象で、人懐っこい。いつかこんな山荘で寛いだ時間を過ごしてみたい。
ここで沢装備を身につけ、湯俣川と水俣川の出会いへ。吊り橋を渡って河原へ降りると1パーティ準備していた。ここから早速渡渉が始まる。この時期の雪解け水はまだまだ冷たい。ふともも付近まで水に濡れたが、30秒程度で足は冷え切ってしまうので、渡渉はなるべく避けたいが右岸に左岸と容赦なく渡渉を強いられる。水流の強いところは肩を組んで渡り切った。普段ストックは持たない主義だが、渡渉にはストックの効果は絶大だ。おんちゃんが気を利かせて私に一本貸してくれた。
下流部の渡歩は当然深い
途中、残置ロープに導かれ、左岸をヘツッたが、足を滑らせ3mほどのスラブを滑落。浅瀬に水没し右臀部を強打した。幸い何とか歩けたが、右足での岩の乗り越しは痛みが強い。よく観察すれば、この水量ではヘツル理由は全くなく、たとえ滑落せずにスラブを進めたとしても深い淵に行き詰まるだけで、全く意味のないヘツリであった。残置ロープとは言え、そこがルートであるという印ではないのだ。長い年月で地形も変わってしまっているのかもしれない。スタートから臀部は痛むがいい経験を得られた。ただ、この一件でリードを歩く自信はすっかり無くしてしまった。素直に國井さんにリードを譲る。
その先、千天出会いを高巻いて、天上沢へ入るのだが、この高巻きが結構渋い。踏み跡も笹に隠され、斜度もきつく、付いていくのがやっとであった。天上沢側に入ると川幅も細まった。この辺りがP2の取り付きだ。残置のワイヤーロープとピンクテープが残されていた。そこを過ぎると川幅は次第に広がり水量が減り、気が付けば100mは有ろうかというゴロ石の河原となった。川の水が無くなれば10分程度で北鎌沢出会いへ到着した頃には、メンバーも皆疲れ切ってしまっていた。
本来ここで幕営の予定だったが、水俣乗越から降りてきたソロの方はコル、もしくは天狗の腰掛までは今日のうちに行くという。そのあと到着した青年は、計画通りにここでテントを張るという。しばらく悩んだが、まずは腹ごしらえと持参したパンをかじる。もぐもぐしているとだいぶ体力も戻ってきた。時間がまだ早かったのと、コルまで上がってしまえば明日のうちに北鎌尾根を脱出する確率が上がるので、メンバーと相談して、1時間ほどしっかり休憩を取って北鎌コルを目指す。休憩の合間に源頭部へ戻り、水を各自5L汲んで上がったが、2100m付近まで沢で水が湧いていた。重荷に苦心したので、ここで汲めばよかったが万が一水が無ければ行き詰まってしまうので、仕方がない。
後ろを振り向くと、我々以外にオレンジのヘルメットが追いかけてくる。コルは狭いので、早くテン場を確保せねばならない。遅れるメンバーを尻目に先を急いだ結果、私一人詰め上げでルートに困ってしまった。きっとこの先に北鎌のコルは有る。藪をかき分けトラバースして北鎌のコルに先に行こうか悩んだが、これ以上パーティが伸びてしまっては遭難しかねない。トラバースせずにしばらく待ってみたが、その間にオレンジのヘルメットの方には追い抜かれてしまった。しかしいくら待っても、上がってくるはずのレジェンドMさん達も上がってこないので、大声で位置を確認しようと呼びかけるが、先ほどまで聞こえていた声も山に反射して隣の沢から聞こえてくる。
翌日引っかかった
これはきっとおんちゃん達がルートを間違えたなと思い、慌てて来たルートを降る。周囲はいつの間にかガスが出て視界は30mほどになってしまった。日暮れも迫っている。目に見えぬおんちゃん達は隣の沢にいるようだ。おいおいそっちは間違いだよ!と言おうと思ったら、北鎌のコルに着いたという。どうやら道を間違ってしまったのは私だったようだ。誰かの山行記録にあったが、これがクライマーズホイホイか。まんまと引っかかってしまった。
再度沢を100mほど降り、薄く隣の沢へのトラバースの踏み跡を見つけ分け入ったが、踏み跡も途中で消失した。怖くなって「おんちゃん、どこー?」と必死に私が叫ぶ。一人となってみるとものすごい孤独感が襲って来た。しばらく声をかけ続けると、ようやく向こうは私のヘルメットが見えたらしい。おんちゃんの声を頼りに藪を強引にトラバースしてようやく合流できた。バリエーションルートでは、メンバー揃った行動が大切だと痛感した。日も暮れる寸前に北鎌コルへ到着し幕営。追い抜いたオレンジのヘルメットの方は、コルよりも少し南側の尾根を大変な思いをして詰め上げ、コルへと降りてきた。コルは3張りで満員。お話ししてみると、神奈川県岳連の老舗H山岳会のソロの方だそうだ。明日はいよいよ本番だが、先が思いやられる。