槍ヶ岳・三俣蓮華岳 DAY4

【A隊】槍ヶ岳・三俣蓮華岳
期 日:2024年8月10日~8月13日
参加者:Lコイケちゃん、レジェンドM、おんちゃん

8月13日(火)晴
三俣山荘(4:00)~かぶり岩(4:40)~第一庭園(5:00)~茶屋予定地(6:50)~第5吊り橋(7:10)~第3吊り橋(8:40)~ガンダム岩(9:50)~第1吊り橋(10:00)~噴湯丘(10:30)~湯俣山荘(11:20)~名無し避難小屋(12:50)~林道終点(13:20)~高瀬ダム(14:10)=(タクシー)七尾山荘(14:40)下山

伊藤新道は、普段より15㎝程水量が多いとのこと。身長160㎝の方で、腰より上に水が来たら渡渉点を間違えていると教わった。午後から雨予報であったので、計画より1時間程度早めまだ暗い4時に出立した。三俣山荘から尾根の先まではほぼ同じ斜度でトラバースしていく。けもの道を拡げたものではなく、きちんと調査をして計画設計を行って開いた道らしい。第一庭園まではほぼ同勾配であった。道は細いが快適だ。伊藤新道の入口伊藤新道の入口

途中、クマの糞を見つけそのあと低いいびきのような異音を聞いた。クマか?とも思ったが、確認しているうちにクマに出会ってしまっては大変と先を急いだ。尾根から川まではかなりの急登を降る。ここでカップルのパーティとすれ違った。さすがにこの時間は早すぎるので途中ビバークしたのではなかろうか。FIXロープを頼りにぐんぐんと高度を下げる。
ようやく沢に出たが、ここで沢には入らず高巻道を降る。途中茶屋予定地の看板があり、近い将来この付近に避難小屋が出来るそう。ここで避難小屋が出来れば伊藤新道はだいぶ楽になるだろうと思う。第5吊り橋は破損していたので、そこから入水。登りに使用した水俣川に比べて水温はそれほど低くない。所々硫黄臭が強いので地熱のせいか温泉でも流入しているのか。まだ上流域であるため水量も少なく、水深はひざ下程度で、どなたがやってくれたのか渡渉点にはケルンがあるので、悩むことなく渡渉を繰り返した。
沢沿いを降りる沢沿いを降りる

第4吊り橋は不明。第3吊り橋も破損で使用不可。この辺りから渡渉に悩むようになる。水量も下流へ行くにしたがって増える。股まで濡れることもしばしばだった。上がってくるパーティは尾根で会った組を加えても4組ほど。パラパラと云った感。伊藤新道は9月がシーズンだとおんちゃんから教わる。渡歩は深いところで股上渡歩は深いところで股上

その後ヘツリ場の足場は難なくクリアしたが、ガンダム岩で高巻きし過ぎてロープの上に出てしまい行き詰まる。戻って中段を巻いた。硫黄臭が強くなってくると噴湯丘だ。あちこちで温泉が噴き出している。触るとかなりの高温だったので、浅瀬の川の水と混じる辺りを探して束の間の天然温泉を楽しんだ。ヘルメットをしたまま温泉に入ったのは初めてだ。硫黄のにおいを身にまといながら最後の渡渉を終え、湯俣山荘まで戻り、山荘へ下山報告。濡れた装備をほどき、しっかりと休憩した。あとはほぼ水平の下山だ。冬合宿はどこにしようかと、気楽な林道歩きで16時の最終のタクシーを待たずに14時10分にタクシーに乗り込み下山完了した。天然温泉天然温泉を味わう

あとがき

話は戻るが、昨年の夏合宿で暁山岳会のもう一人のレジェンドYさんと三俣山荘に連泊した時に、「伊藤新道」が復活したと聞いた。おんちゃんとも、いつか行ってみたいねと話したことに端を発する。今年の夏合宿の行先を決める際、伊藤新道に行こうかと決めたが、さて伊藤新道を遡った後、どこへ行ってどこを降りるようか。水晶や鷲羽は昨年の夏合宿で登っていたし、雲ノ平では遠すぎるきらいもある。自家用車を利用するので、出来れば登山口と下山口は合わせるかせめてタクシー移動圏内にしたい。
ふと地図を見ると、伊藤新道から硫黄尾根をまたいで「北鎌尾根」が目に留まった。これも昨年の夏合宿で槍ヶ岳に登った際に、山頂から見下ろした北鎌尾根。その時にちょうど1パーティが上がってきて、私たちもその勇者たちに拍手を送ったのを思い出した。いまの経験や技術なら北鎌尾根も行けるんじゃなかろうか。

であれば、湯俣から入山して水俣川を遡行し、北鎌尾根に取り付いて帰りを伊藤新道にしてみてはどうだろうかと思いついてしまった。そう、まさに思いついてしまったのだ。ネットで山行記録を漁ると、やはり思いついてしまった人たちの記録が出てくる。水俣川も湯俣川も沢登りというよりも基本は渡渉する川で、あまり難しくは無さそうなのも幸いしたし、ガチャなどの沢装備はそのまま北鎌尾根でも使えるはずだ。川沿いの遡行は涼しいであろうという目論見もありレジェンドMさんに相談した。Mさんは、残雪期等で北鎌尾根は登っているので、いまさらと言われるかと覚悟したが、以外にも「そろそろもう一度登ってみたかったんだよね。ただルートはよく検討しないと」との回答に不安と安堵の混ざった複雑な心境になったのを覚えている。

暁山岳会の先輩にアドバイスをもらおうと「北鎌は行ったことがありますか」と聞くと「北鎌は、どちらかというと岩登りよりもルートファインディングだ」と教わった。確かに、よく踏み間違えた。槍ヶ岳山頂に至るまで10回くらい間違えたと感じるほどだ。
しかし、久しぶりにワクワクと不安の入り混じるルートであった。計画を練れば練るほど、他者の報告を見れば見るほど「不安」と「行ける」という気持ちがより深まる。取付いてしまえば、エスケープルートは行くか戻るしかない。おんちゃんに不安な気持ちを吐露するたびに、「大丈夫だよ」という。そのたびに不安が強まるのも不思議な感覚であった。

初日は沢の遡行に、2日目が北鎌尾根、3日目が夏休みで最終日が伊藤新道での沢下り。このルートはなかなか気も抜けないようでいて、しかし安息日もあり、最後の最後までワクワクの止まらない名ルートだと思う。下山してから気付いたが、遡行したのが「水」俣川で、下った伊藤新道側は「湯」俣川。どちらも俣川は同じ字を使用している。思い返すと確かに、水俣川は雪解け水でものすごく冷たく、上流に行けば行くほどよく冷えていたが、湯俣川は上流部も少し温い感じ。下流に行けば温泉とも合流してとても温く感じた。命名した人も、この温度差を感じていたのかもしれないと思うと感慨深い。そのうちに、この三俣山荘が舞台の「黒部の山賊」も読んでみようと思う。

最後に終始リードしてくれたおんちゃんは、ルートをよく読んでシッカリとチームを引っ張ってくれて感謝します。また、レジェンドMさんはやはり困った時に抜群の安定感であった。行き詰まることに恐怖を覚える私にとって、無くてはならない安心感を与えてくれた。今回、Mさんが居たから行けたようなもので、だからこそいつかまた誰かが、このルートを行きたいと言われた時には、自力で行けるように経験を積み増ししていかねばならないなと思った。そして、計画段階で参加予定だったゆうさんが直前で参加出来なくなってしまったことは、とても残念だった。いつか行ける時が来たらご一緒します(たぶん)。

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